Sakuyaのイソジオタ活のススメ

サブカルにまみれていたバブル時代を経て現在五十路

私と少女マンガ②

前振りしました、吉田秋生さんのマンガについて。

実はあまり作家にこだわって読む方じゃないんですが、「好きなマンガ家は?」と聞かれたら吉田秋生と答えます。

最初に読んだのは別冊少女コミックに連載していた「カリフォルニア物語」。これはちょっと衝撃過ぎて最後まで読み進められませんでした。小学高学年の頃に読んだのですが、アメリカが舞台の暗くて重い精神世界がやはりそのときはついていけなかったというか、彼女の話は良くも悪くも「マンガ」というより「ドラマ」なので「マンガ」として読んだためについていけなかったんだと思います。そしてそれ以来読み返していません。

そのあとに「夢見る頃をすぎても」シリーズや「河よりも長くゆるやかに」を読んで、やっぱり「ドラマ」だなあ、と。今度は日本が舞台だったこともあり、特に「河よりも…」は一話目の暗くすさんだ話から次の青春コメディへの落差がすごくて、逆にのめり込んでしまいました(笑)

吉田さんの話は、とにかく人物も物語もリアルです。「キャラ」とか「ストーリィ」とかいう言葉すら憚られるくらい。当時24年組のマンガが、外国や宇宙といった他所の世界が舞台だったのに対して、急に隣町の話のような近さの物語でした。そして、何と言っても私の心を掴んだのは1984年に発表された「Fly boy,in the sky」です。まるでNHKドラマのように秀逸な青春ドラマ。そして表紙がものすごく美しかった。後からいえば、この話は「BANANA FISH」につながる話なんですが、発表時はそんなことは想像できず、迷える美大生の伊部さんとこれまた迷える島根の高校生ジャンパー英二の物語でした。もうずっと後々まで、私はこの話が好きで、引きずっていて、こんな話が書けたらなあ、と思っていました。それまで読んでいたマンガが、別世界の華やかなものだったのに対して、吉田さんのマンガは空間の匂いが感じられるくらい近くて、自分が生きてる空間とつながっている感じがしました。

 

と、いいながら、次には「BANANA FISH」ですよ。アメリカの闇世界を描いているハードな物語。でも軸となっているのはアッシュと英二の友情で。最初この話に伊部さんと英二が再び登場したときはびっくりしました。そして、Fly boy…とは似ても似つかないハードな展開。繰り広げられる息もつかせぬアクションにうなりながら、毎回ドキドキしながら読んでいました。ご存知の方も多いと思いますが、別冊少女コミックで9年間にわたり連載された大ヒット作で、最近になって舞台化やアニメ化もされています。この長い話のラストは、とても衝撃的で打ちのめされてしばらく落ち込んだくらい。そして、後日譚の「光の庭」。英二とシンの再生の話ですが、闇の中にわずかにさしてくる朝陽みたいな感じで私の大好きな話です。

ほかにも好きな作品はたくさんあるのですが、とりあえず「BANANA FISH」関連は外せないので。それ以外だと「ラバーズ・キッス」なんかも読みながら「やられた!」と声に出ちゃった作品ですが。

吉田さんの「ドラマ」は臨場感が半端なくて、何をテーマにしていても、説得力があって、とてつもなく物語創りが上手い。好きなマンガ家というより尊敬している作家さんですね。